無痛分娩しようとしたら緊急帝王切開になった出産の話

1ヶ月ちょっと前くらいに出産をしたので、そのときの経緯について書いておこうと思います。内容はタイトルの通り、無痛分娩しようとしたら失敗(?)して緊急帝王切開になったという話です。

無痛分娩を選んだ時点での想定

妊娠が判明してから分娩について考えたとき、痛いのは普通に嫌だし、体力にもまったく自信がなく、産後も里帰りや親から手伝ってもらう等の選択肢はない(選択肢があったとしても選択する気がない)ため、予算的には手痛いものの「産後の回復が早い」とされる無痛分娩を選ぶことにしました。

無理なく行ける範囲の病院でちょうど無痛分娩が得意なところがあったのも、渡りに船という感じでした。また、私は陣痛を待たず計画的に分娩する「計画無痛分娩」をさらに選択したので、妊娠後期には入院日・出産日がほぼ決まっており、あらかじめ予定も立てやすくてよかったです。

想定と現実の違い(概略)

無痛分娩がスムーズに進行した場合のスケジュールについて、病院から説明されたのは以下のような流れでした。

  • 1日目:入院
  • 2日目:出産
  • 7日目:退院

それで私がどうなったかというと、以下です。

  • 1日目:入院
  • 2日目:お産が進行せず中断
  • 3日目:お産が進行せず緊急帝王切開
  • 10日目:退院

本来の流れであれば、産後数時間で飲食できるようになるし、歩行や授乳ももちろん可能、産後もろもろの痛みはあるものの、回復は早くすぐに退院できるはずでした。しかし我が身に実際に起こったことといえば、2日間ほぼ絶食で痛みに苦しんだ挙句に腹を切られる、という想定外の事態でした。もちろん産後の回復も散々です。

ちなみに無痛分娩の予定が途中で帝王切開になった場合、基本的には帝王切開の料金(※保険適用)になるので、金銭面では若干ながら助かりました。無痛分娩は帝王切開より高額なのです……もっと気軽に無痛分娩できるようになればいいのになー。

詳細な経緯

ここからは詳しい体験談です。

■1日目、入院日:昼から絶食、午後に手続きののち入院し、まず硬膜外麻酔の処置、麻酔が効いたか確認も兼ねてバルーン的なもの挿入、その後麻酔を切って普通に夕食を食べて就寝、というのがこの日のおおまかな流れです。

私には特定の不安な状況下において異常な緊張・嘔吐発作のようなものが起こる精神疾患全般性不安障害)が持病としてあるのですが、妊娠後半はほとんど症状が出なかったのでのん気に構えていたら、入院直前になって未知の「出産」という現象に対する不安感が爆発したらしく、家を出る前から何度か吐いたりしていました。あと、なんか気が急いて、気に入っていたパスタ用の皿を1枚割りました。今にして思えばこのあたりからケチがつき始めたんじゃないかな、というところです。

さて入院後です。

硬膜外麻酔は背中にチューブのようなものを入れてそこから麻酔薬を入れる仕組みで、麻酔中は飲食及び起き上がることも禁止です。そのため、水分もろもろ補給用、あと適宜薬剤を入れる用の点滴をまず腕に用意する、とのことでした。私は看護師さんが言うところの「血管の位置が微妙」らしく、腕の血管は失敗に終わり、手首に点滴を付けられました。点滴の針は採血とかのに比べるとかなり太いので痛かったです。

次に本番の硬膜外麻酔。背中にチューブを入れる際は、腹の中に小さい人が入っている状態で思いきり背を丸めなければならなず、めちゃくちゃ苦しかったです。というか、自力では丸めきれず数人のスタッフに無理やり押さえられました。で、このチューブ挿しがまた2回失敗したようでした。若い女性医師が「えっ」とか「あれ?」とか言ってるのが聞こえて怖かったです。あとで聞くと「3回目でようやく2センチ確保できたからこれでいってみます」とのこと。何が2センチだったのかは不明。

お試し麻酔はチューブの具合が微妙なためか効きづらい感じで、「まあでも一応効いてるから処置します」とか言って麻酔が効いてなければ痛いらしい処置を始められたのでこれも怖かったです。確かに痛くはないのですが、恐怖のために手足が震えてきて、不安や緊張の症状も軽く出始めている感じでした。

それでもこの日はなんとか順調と呼べる範囲内でことが進み、夕食もごく普通に食べられました。まさかこの夕食以降数日まともに食べられなくなるとは思いもしませんでした。

あと、ずっと付き添っていてくれた夫は処置があるたびに外に出されていて気の毒でした。

■2日目、お産の進行とは:早朝から起こされて再度麻酔、計画的にお産を進めるため人工破膜などの処置をします。麻酔が「一応」効いているので痛くはないはずですが、いまいち麻酔を信じきれないためか、内臓をつねられるような微妙な痛みはありました。

麻酔が切れてくる頃、人工的に陣痛を起こすため陣痛促進剤の点滴が始まります。この病院の無痛分娩は最初から最後まで麻酔をするわけではなく、「ある程度お産が進行するまで=子宮口が5センチ程度開き、胎児が降りてくるまで」は、麻酔なしで行われます。麻酔をしたままだとお産の進みが悪くなるから、とのこと。つまりある程度は陣痛に耐えなければいけません。ただ、事前の説明では「お産本番に比べればまだまだ耐えられる程度の痛み」と言われていたので、それほど恐怖は感じていませんでした。まあいけるだろう、と思っていた。ウフフ、このときはまだ……。

一旦帰宅していた夫が再び来てくれて、促進剤が本気を出し始める昼ごろまでは、喋ったり笑ったりする余裕がありました。が、午後になってから一転。もうとにかく痛い。これで本番の半分くらいの痛さか、と思うと無痛にしといてほんとによかったと思いました。痛さに加えてなぜか膀胱がちぎれるみたいな感覚もあり、足がガタガタ震えました。それで苦しがっていたらあっさり「麻酔使ってみますか?」と言われました。

よく分からないまま「痛いのでお願いします」と言うと麻酔が開始されましたが、この麻酔がまったく効いてこないのです。麻酔したら起き上がれないので、膀胱をなんとかするためにトイレに行くとかもできない。1時間ほどして、「やっぱり硬膜外麻酔の効きが悪いのでチューブ挿し直します」と言われたときには呆然としました。昨日3回目でやっと成功したとか言ってたのに、結局3回とも失敗だったとは。今度は陣痛に耐えながら背を丸めて4回目のチューブ挿入。それから麻酔を入れると、嘘みたいに一瞬で楽になりました。これまでのもやもやはなんだったのか。

痛みがなくなったのでほっとしていたら、「麻酔を入れているあいだはお産も止まるので、落ち着いたらまた麻酔を切って促進剤を増やしましょう」とのことで、「は?」と思わず聞き返してしまう。

説明によると、促進剤を使って陣痛を起こしている場合、痛みの度合いや陣痛間隔イコールお産の進行ではないらしく、私の場合は「痛いだけでまったくお産が進んでいない」状態だったそうです。あと、「子宮口が5センチ程度開くまでの痛み」というのも、めちゃくちゃ個人差が大きく、余裕で笑っていられる人もいれば、その時点で泣き叫ぶくらい痛い人もいるという。そんなのもう個人差で片付けられる範囲を超えているのでは、と思いますが、そういうものだそうです。私はてっきり、痛くなればなるほどお産が進むものだと思い込んでいたので、ただ痛いだけでお産が進まない、という拷問のような状況が発生するとは驚きでした。

とにかく私は進みが悪く、つまり子宮口も開かないし胎児も降りてこない、でもなんか促進剤でずっと痛い、みたいな状態、そして麻酔を使ったらお産が止まるので麻酔も使えない、という、わりと詰んでいます。痛み最高潮のときは3分間隔くらいにはなっていて、ただ耐えるだけで精一杯、集中しないと耐えきれず叫んだり暴れたりしそうだったので、このときは人生で一番集中力を使ったかもしれません。

それで麻酔を切って頑張ってはみたものの、まったくなんの進展もないまま「促進剤は使える時間帯が決まっているので今日は一旦中止して明日また頑張りましょう」ということになりました。その時点でそこそこ参っていた私は、つい「このままだめだったら帝王切開ですか」と聞いてしまったのですが、そしたらなぜか点滴をチェックしていた人がキレ気味になって、「今なんの問題もないので帝王切開するとしたら自費になりますよ」とか意味不明な(※自費はさすがにありえない)感じで脅してきたり、なんか「促進剤や麻酔に頼らないで夜中も自然な陣痛がくるように待ってみたらお産も進むと思う」みたいなこと言い出したので、適当に「分かりました」と答えた結果、麻酔なしで一夜過ごすことになりました。

促進剤の効果が多少残ってるせいか夜中も昼と同程度の陣痛があり、ほとんど眠れないまま翌日になりました。

■3日目、緊急帝王切開まで:麻酔を使う可能性があるため絶飲食は継続中。また朝から促進剤を追加してお産の進行待ちです。飲まず食わずで体力もやばく、いったいなにがどうなったら「お産が進む」のか、入れ代わり立ち代わり現れる医療スタッフの人々に尋ねてみるのですが、みな答えが違っていて困惑しました。麻酔してても促進剤ちゃんと使えば大丈夫という人もいれば、麻酔は絶対だめ派の人もいるし、お産が進むかどうかは運みたいなものだという人もいる。

昼ごろになりもう疲れたので休めるなら休みたい、と言うと、麻酔を多少効かせつつ促進剤をどんどん追加しましょう、という流れになり、結局かなり痛いまままた延々午後までひっぱることに。

ちなみにここまで胎児の状態はびっくりするほど安定していました。心拍も落ちないし、胎動もちょいちょいある。もし胎児になんらかの異常が起こった場合は即帝王切開になるわけですが、胎児が元気なので私もなんとか普通分娩すべく耐えるしかない状況です。

で、またこの日の担当の医療スタッフがクールというか、ひたすら「麻酔入れて促進剤増やしますね」しか言わない人で、「促進剤MAXです」になってからは麻酔もそこそこ入ってるはずなのにまた痛みで悶絶しました。ただそれでも取り乱して喚いたのは1~2回くらいだったので、自然分娩の陣痛に比べればよほどマシなのでしょう。

ひたすら耐え続けて3日目も終わろうかという頃になり、入院後初めて主治医(妊婦健診でずっとお世話になっていた先生)が来てくれて、もろもろ診察を行い、「お産は進みつつあるけど骨盤の位置の関係で下からはまず無理、もう破水もしているし赤ちゃんが元気なうちに帝王切開しましょう」という流れになりました。

私は完全に疲れ切っていて、さらに前日に帝王切開についてネガティブな意見を聞いたせいもあり、もともと産み方こだわりはなかったはずなのに「自分がもう少し麻酔なしで耐えたら下から自然に産めたんじゃないか」とか変な思想にとらわれ始め、胎児に申し訳ない気持ちに勝手になって、あと手術というものが初めてなのでマジで怖い、漠然とした恐怖もどんどん膨れ上がってきて、なんかわけが分からなくてわあわあ泣いているうちに手術室まで運ばれました。

帝王切開の手術自体は、主治医が執刀してくださって滞りなく進んだのですが、初めての経験で何が起こるのか分からず、持病の不安発作のようなものが強く出てしまって上半身だけ背骨が折れるほどガタガタ震え続け、術後も吐き気と寒気と震えによる背中の痛みで重症みたいな感じになっていました。そんなんだったけど、胎児が出てきてちょっと遅れて泣き声を聞いたときは不安とはまた別のパニックになりそうなくらいの強い感情(おそらくは感動)の波が来て、「よかった、よく来たね」と言いながらまたぽろぽろ泣きました。ほぼ泣きっぱなしでした。

総括

  • 出産全般について全体的に勉強不足だった
  • もっと学校とかでお産について教えるべきでは……
  • お産について=お産が人それぞれで、100人いたら100通りの経緯をたどることなど
  • 「お産の進行」がスムーズじゃないパターンを勉強しとくべきだった
  • 帝王切開否定派の人の意見は絶対にスルーしたほうがいい
  • 陣痛の痛さは想像をはるかに超えることが分かった
  • 無痛分娩でも場合によってはかなり痛い思いをする(和痛分娩って呼び方のほうが実態と合ってますね)
  • 無痛分娩するつもりでも帝王切開になることがある
  • 胎児が元気でも帝王切開になることがある
  • 帝王切開は術中・術後がまた死ぬほど痛い(別途記事にするかも)
  • 出産に関しては医学に感謝を覚えると同時に、医学の限界を感じることも多い
  • なんかもっと早く骨格や骨盤の位置が悪いとか分からなかったの……?
  • あんな極限状態で赤子と対面させられてもかわいいとか思う余裕はない
  • というか、「赤ちゃんも頑張ってる」系の声かけについて、私の場合は初産ということもあり「腹の中にいるまだ会ったこともない小さい人」の頑張りを想像し自分の励みに変換することは難しかった
  • でもいざ対面すると泣く、感動する
  • これで終わりじゃなくて入院中・産後1ヶ月がさらなる地獄だった(別途記事にするかも)

妊娠出産はとにかく痛い・苦しいことばかりで、こんなんだとあらかじめ知ってたら産もうとは思わなかったかもしれません。なので今は、よく分からないままとにかく産んでしまってよかったな、と思っています。以上。